自己血管内シャント
基本的には利き手の反対側の親指の根元の付近に局所麻酔下で約2-3cm切開し、橈骨動脈という動脈と、橈側皮静脈という静脈を縫い合わせます。手術時間は約1.5時間位です。
人工血管内シャント
もしも自己血管が細くて十分なシャントができなさそうであれば人工血管を使ってシャントを造設します。この場合は腋のところに麻酔をします。術後数時間は手術した側の腕が動かしずらくなるので、お帰りの際は三角巾を使用します。手術時間は約2時間位です。
いずれも基本的に日帰り手術となります。(入院対応も可能です)
上腕動脈表在化
心機能が悪い、ご高齢、認知症がある。そのような患者様にお勧めするのが上腕動脈表在化です手術時間は約2時間位です。長期留置カテーテルのバックアップアクセスとしても作製します。
合併症
局所の腫れ・痛み
→お帰りの際に炎症止めの内服薬をお渡しします
※人工血管使用で時に局所の腫脹がしばらく続く場合があります
感染(手術創が赤くはれたり発熱したりする)
→予防的に手術中に抗生剤を投与します。抗生剤のアレルギーがある患者様は内服処方をいたします。
※状況によっては局所処置や再手術を要する場合もあります(まれ)
出血
→通常はガーゼが赤くなる程度で、今まで輸血を要したことはありません
※特に他疾患にて抗血小板剤を内服されているような場合、手術後にジワジワと創部から出血してくることが起こり得ます。ご心配な場合はすぐに当院までご連絡下さい。
早期のシャント閉塞
→カテーテル治療を行って再開通させますが、不成功の場合は再手術を行うこともあります
シャントは透析ごとに血液を取り出す所と返す所との2ヶ所を穿刺されます。これを週に3回するため、1年(52週)では約300回穿刺されることとなります。そのため、シャントの血管は徐々に荒廃してきます。その結果、シャントの一部が狭くなったり、つまったりします。シャントの一部が狭くなると透析の血流不足、静脈圧の上昇、シャント肢の腫脹などが見られます。この時はシャントの造影検査などを行い、PTA(バルーンによる拡張術:風船を付けたカテーテルで狭いところを広げる)あるいは手術でなおすことになります。また、つまった時は、シャント音やスリルがなくなり、腕が冷たくなります。当院ではそのようなときにはPTAで対応します。ほとんどの治療が可能ですが種々tが必要な時もあります。シャントの寿命を左右する因子はいろいろこありますが、基礎疾患が糖尿病、高年齢、女性ほど開存率が低くなります。これは、血管病変や動脈硬化を有することと関係しているからだと考えられます。この他に心合併症を有している患者さんや長期にわたる療養により末梢の静脈系が荒廃している患者さん、皮下脂肪が多く血管の細い女性の患者さんのシャントの寿命が短いと言われています。シャントの種類別では報告されているでーたーでは自己血管内シャントの寿命は、3年で65%であり,5年で55%でした。また,人工血管内シャントにおいては3年で約30%,5年で約20%という成績でした。このように、自己血管内シャントは5年後も半数以上の患者さんで使いつづけることができます。しかし、人工血管のシャントの寿命は短く、3年後には70%ほどの患者さんが再度手術を受けています。